4月例会参加者は35名。今月は会場が変更。始めに、代表・岩辺より第3回となった「詩・小さなお話し」。今回は、長田大三郎の詩「たんぽぽのわた」。長田氏は兵庫県の山村の小学校校長で、同和教育、とりわけ文学教育に指導的位置を果たした人。巣立つ子どもたちへの讃歌となる詩である。定刻に来た人にこのカードが配られます。3枚目。出典は、岩辺編著『子どもたちに詩をいっぱい』(旬報社)
1⃣ ショート・アニマシオン「新しい教科書へのいざない」 アニメーター: 小山公一
今月より、新しい試みとして、ショート・アニマシオンを20分ほど行う。今月担当は小山公一さん。「新しい教科書へいざなうアニマシオン」。「4月から新しくなったものはなんですか?」との問いかけから始まった。「学年、先生、教室・・・・」。それに、「教科書」の声。そこで、新教科書(国語)の表紙が並べられる。学年名を隠してある。どれが、どの学年だろうか…。三省堂の教科書では、学年が上がるにつれて、身近な地域から宇宙へ広がっていく。こんなことも並べてみてはじめて「発見」できることだ。さらに、表紙絵にふさわしい標語(タイトル)をつけてみよう、漢字2文字の熟語であらわしてみよう…、などの活動も提起された。さらに、「目次で遊ぶ」「教科書の内容を目次から推理する」などの活動が紹介された。
2⃣ ワークショップ=「にじんだ文章は何か?」
今年度前半は『子どもの心に本をとどける 30のアニマシオン』(かもがわ出版)にもとづく活動を紹介する企画となっています。4月は「にじんだ文章は何か?―事件の背景を推理しよう」。
1. 導入クイズ
眼鏡をかけた6年生男子、森鴎外、浦沢直樹、筒井康隆の写真が映し出され、共通することはなんでしょう?と問われた。すべての人が星新一につながっている。6年生は、藤條さんの学校の図書委員長。読書大好き人間で、星新一の大大ファン。森鴎外は星新一の大叔父にあたる。浦沢氏は星新一の大ファン、筒井氏は親友であった…と。
2. 星新一『ユキコちゃんのしかえし』でアニマシオン
まず、グループに5枚のカードが配られた。星新一「ユキコちゃんのしかえし」全文を5つのフレーズに分け、A~Eの記号が付けられている。これを、読みながら順番に並べていく。(まず、この回答を確認)
最後の方のカードの一部分が「ジュースをこぼしたために、にじんで見えなくなっている。そこには何がかくされているのだろう?」との問いかけにこたえて、解答を考える。
グループごとに回答を発表。このとき、博士の白衣と眼鏡が用意されていて、雰囲気を盛り上げた。アニメーターからは「回答はこの本の中に」ということで、星新一の著作の紹介にとどめた。例会では、すでにこの物語を読んでいる人が多く「知っている」ことの発表になったグループが半分ほどになってしまったのは、やむをえないことだろう。子どもたちの場合は、
「(香水)虫がたくさん寄ってきた」
「(薬)人をやさしくする」
「(薬)顔が悪魔になっていた」
などなど、様々な考えが出されたということだ。「たくさんの考えがあるから、おもしろい本ができるんだなと思った」「これは頭を使う勉強になった」などの感想も出されたということだ。
――感想より
●あっという間に時間が過ぎました。ばらばらになった物語の順番をみんなで読んで並べ替えるのもよかった。2か所の(ジュースがこぼれた所)文章を考えるのも楽しかった。発表も、ナレーター、博士、ユキコと分担し、自分たちの班で考えたものが発表でき、聞く側もしっかり聞けた。想像する楽しさが味わえた。ぜひ教室でも実践したい。星新一さんの本に、子どもたちも親しむだろう。お疲れさまでした。(N)
●頭を柔らかく…、と思っていても、大人の目線で考えてしまうなと思いました。自然と続きが気になる。前の部分を読み返したくなる、そんな内容でした。「自然と」というのが大切だと改めて思います。~しなさいと言わないで考える授業を目指したいなと思います。白衣、小道具等も子どものやる気をupさせるのに有効だと思いました。(M)
*テキスト
絵本『ユキコちゃんのしかえし』作・星新一、絵・ひがしちから、偕成社2014
『きまぐれロボット』星新一・作、和田誠・絵、理論社2004
――評者(岩辺)より
・高学年~中学生を引き込むワークショップだった。漢字や語彙の指導、逐条的解釈、「主人公は?」「(人物やその場の)様子は?」「それはどこでわかる?」「テーマは?」…と迫っていく読解の授業は、何年生なっても(塾でも)繰り返されるワンパターンな「国語」イメージとなっている。そのような中で、ばらばらにされた文章を組み立てなおし、さらに隠された部分を文脈から推理するというワークショップは、能動的な議論を喚起している。
そこに、博士の白衣や眼鏡などを用意して、「非日常の時間」を生み出していく工夫がなされている。さすがに演劇の手法に優れた藤條アニメーターの盛り上げだった。
感想にも書かれているが、このアニマシオンのねらいは、「思わず」読み返していた…、という活動にある。好き勝手におもしろい“思いつき”を言えばよいのではない。やはり「文脈」というものがあり、丁寧に読めば必然的に至る「解答」が得られることに気付いていくこと、そして、星新一という作家のおもしろさ、すばらしさを「発見」していくことにある。絵本『ユキコちゃんのしかえし』は、途中、ストップして問いかけるという方法で、同じような活動ができる、とても工夫された展開になっているので、おススメだ。
同様な手法は、『30のアニマシオン』の中では、絵を組み立てる「ばらばらになった紙芝居」、登場人物を組み立てていく「小さな種がつなげる物語」などを紹介している。『注文の多い料理店』の扉を並べる活動をしている例もある。
さて、今月から、ショート・アニマシオンという試みを始めた。一番バッターを小山さんが引き受けて、新年度スタートにふさわしい活動を紹介してくれた。インクのにおいのする教科書を受け取った時の、あの新鮮な「がんばるぞ!」という意欲を、いかに持続させ、子どもの期待に応える1年を創りだすことができるか…。私たち自身が初心を確かめさせられるショートアニマシオンだった。
ただ、サービス精神旺盛な小山アニメーターは20分間に多くを盛り込もうとされた。この企画は「15~20分でできる」アニマシオンを実際に経験しあうことにある。「表紙絵から考える」というアニマシオン1つを具体的に(紹介、説明ではなく)展開したかったと思う。(以上記録:岩辺)
――アニメーターをして
●(小山公一)
ワクワクとした気持ちで新学年を迎えられたらうれしいものです。その嬉しさを教科書にも向けてみました。今までと違ったワクワク感を味わってもらえたらと思っています。
まずは、星新一さんの魅力を探ろうと、星新一さんの本を読んだ。さらに、星新一さんとつながりのある人物を探し、クイズ形式にして、参加者に作者を好きになってもらおうとプレゼンを考えた。ワークショップの流れは、子どもたちと活動した時より、ささやかな演出を加え(小道具・衣装等)、大人でも楽しめるように工夫した。限られた範囲内で、自由に想像する活動はとても楽しい。ひとりで想像したことを仲間とシェアし合う姿は、子どもも大人も素敵だ。楽しい作品を読ませてくれた星新一さんと、初めてアニメーターをさせていただいたこの会に、熱く感謝する。