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今こそ読もう、この1冊!!04

『山はしっている』

リビー・ウォルデン 作

リチャード・ジョーンズ 絵

鈴木出版株式会社

 

 不要不急のお出かけは控えて、外へ行くのもままならぬ毎日。ちょっと、しっとり落ち着いて過ごしたいときにお薦めの1冊です。絵本をひらいて山へ行きませんか。ほら、表紙の木立の向こうに澄んだ空気が流れています。「山に生きるものは、山にみまもられています。どっしりと、ちからづよく。いきものたちのいとなみをすべて、山はみつめつづけてきました。」(本文から)

夜が明けるころ鳥たちが飛び立ちます。やまぎわがバラ色の朝焼けに染まるころシロイワヤギが、それからナキウサギが朝ごはんを食べに現れます。朝もやの中をヘラジカが、木立の木漏れ日の中を鳥たちが、グズリがえものをもとめてうろつき、ビーバーが川べりでダムを作ります。たそがれどきはハイイログマが水浴びをし、夜になると動き始める動物たちもいます。ボブキャット、ネズミ、クロクマ、オオカミ、フクロウたち。狩るものも逃げるものも夜のかげがつつみます。そして、夜明けをむかえます。

 夜が明け、日が沈みまた夜明けを迎える間のさまざまな動物たちの営みは一瞬でもあり、また繰り返される永遠の時の流れでもあります。静かに語りかける文章と色調を抑えた美しい絵に魅了されます。子ガモを見守る親ガモの姿、ウサギが駆け回る野原に咲く小さな花々など細かなところまで描かれていてじっくりとページを開いて味わいたい絵本です。

 

 最後の見返しに絵本のあちらこちらにあらわれていた動物が48コマ描かれています。「どこにいたのかな」と本文に戻って探しながらもう一度ゆっくりと楽しむことができます。小学校低学年から、おとなまで。(石井啓子)