高田敏子(1914~1989)、ポプラ社1972.8(1998.3 第39刷)
とても丁寧に書かれた、中学生のための入門書。取り上げられている詩・詩人は、とっつきにくい古典的作品や現代詩は含んでいないが、けっして容易いものばかりではない。著者がほんとうに好きな、中学生と共に読みあいたい、分かちあいたいと願う作品が並べられている。「お母さん詩人」と親しみを込めて呼ばれてきた著者だから、柔らかな、噛んで含ませるような語りだ。1972年初版だが、けっして古くはない。いまでも、大人にもすすめたい。とくに詩についてまとまった勉強をしようと思う教師にはお勧めだ。
詩とはなにか…ということは難しい。谷川俊太郎さんは『詩ってなんだろう』(筑摩書房)の中で、「詩ってなんだろうと問われて、こたえられた人はいない」とまで書いている。しかし、詩はいわゆる文章(散文)とは異なる。では、それをどう説明したらいいだろう。
まず、書きたいとおもう「心の自由」が大切だ。「書こう」「書きたい」という気持ちがスタートだ。—「詩とは何か」というむずかしい問題も、「書く」ということの中からさぐってゆくのではないかと、わたくしには思われるのです。‥‥
詩は、その人の生き方や思い方、生活に密着したところから生まれます。生活を愛する心、生活を見つめる心、生きつづける日々のなかで、たしかめたり、こころみたりする心から生まれます。―肉体に運動が必要であると同様に—心の運動も大切なのです。 ―
この言葉が基調になっていると思う。この本のすばらしさ、そして高田さんが努力されたのは、一つひとつの提起(「自由な心のもち方」、「見えないものまで見る心」「詩の中のイメージとは」「じっと見つめる」「名前を忘れて見る」「美しさについて」等々)をするたびに、たくさんの作品例を挙げて、具体的に、丁寧に説明していることだ。つまり、教師としてはこれ以上の学びのテキストはないと言える。
さて、私は
詩=韻+律+省略+詩情
という「詩の公式」を持っている。この中で難しいのは、「省略」だろう。このことも著者はこう書いている。
―詩句の美しさはいろいろな飾りのことばによって、できあがるのではありません。むしろ、ことばをぎりぎりの極限まで節約するところから、生まれるといえるのでしょう。―
と。そこからの説明は読んでください。
詩というのは、逐条の解釈は必要ない。声に出して(あるいは黙って)、繰り返し読み味わうことだという論もある。しかし、それだけでは、〈教育〉にはならないだろう。生徒から見れば、「先生、逃げてるな」ということになる。では、どうしたらいいか、まず読んでいただきたい。(岩辺泰吏)
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