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今こそ読もう、この1冊!!11

 『ファニー 13歳の指揮官』

 作・ファニー・ベン=アミ

 編・ガリラ・ロンフェデル・アミット

 訳・伏見操

 岩波書店2017

 

 ドイツに住んでいた少女ファニーの家族は、1933年ナチスのユダヤ人迫害をのがれてフランスに移る。しかし、フランスもドイツが占領し、父は連行され、強制収容所に送られる。子どもだけは逃そうと様々な努力が積み重ねられていく。そして、最終的にはスイスに子どもたちを移すことになる。最終的には28人の子どもたちのリーダーとして、13歳のファニーが守り通していく。

 ・・・と要約するのは簡単だが、息の詰まるような緊張、不安の連続だ。瞬時の判断がファニーの肩にかかる。その危機の度に手を差しのべる大人たちがいた。そこにも人への信頼を見出す。

「この本を読んだみなさんが、これを外国で起こった、遠い昔の物語とするのではなく、自分に引きよせて、具体的に考えてくださったら、こんなにうれしいことはありません。想像力の大きな役割のひとつは、ほかの人の苦しみや喜びを察することです。そうすることで、世の中にあるたくさんの問題に立ち向かい、自分だけでなく周りの人たちも、よりよく生きて行けるはず。ファニーや両親、周囲の人々、そして今現在、つらい状況にいるすべての人々の苦しみが、単なる苦しみで終わることなく、未来への希望につながるようにするためにも。」と、「訳者あとがき」はメッセージを送っている。ファニーが、子どもたちと別れ、子ども時代から過ごしたチューリッヒのクリンガー夫妻の懐かしい家にたどり着いた時は、深い感動がこみあげた。カバーの絵もこの物語(ノンフィクション)にふさわしい。

 

杉並区の図書館もやっと開いた。待ち続けた本だ。一気に読んだ。(岩辺泰吏)