ソレルと驚きのタネ
ニコラ・スキナー作 宮坂宏美訳 ハーパー・コリンズジャパン
2020年4月 1600円+税
「ネイチャー・ファンタジー」と銘打ったこの本は、英ガーディアン紙(園芸誌ではないのですが)が選ぶ2019年度年間ベストブックでもあるという。
本を開くと、よくわからない警告文が目に飛び込んでくる。「気をつけろ!」「危険だよ!」けれど、何が危険なのか?どのように気を付ければいいのかがわからない。少々苛立ちながら、何が起こるか知りたくて本を読み進めた。
主人公はソレル、6年生。シングルマザーの母親と二人暮らしである。生活に疲れた母を喜ばせようと、ソレルは必死で「良い子」になろうとしている。折も折、ガチゴチーニ校長が優等生にポルトガル旅行プレゼントとの話が持ち上がり、ソレルはさらに優等生を目指そうとする。だが、ソレルは、種の入った古びた封筒を見つけふしぎな声を聴く。「その種をまけば、必要なものが手に入る」ソレルは、優等生コンテストで1位になることを望んで、種をまくのだが・・・。
次から次へ起こる奇想天外な事件に惹きこまれる。友人のニーナ、園芸ショップのシドさん、ヤナギの木など、それぞれの登場人物(植物)が物語の中で個性を発揮する。窮地に追いつめられたソレルは、やっとのことでママの本当の思いを知ることになる。
種が感染させた恐ろしい病は、今のコロナ禍を思わせる。「コロナは自然から人間へのしっぺ返しだ・・・」という考えに陥りがちな私にとって、ソレルの運命を狂わせる「呪い」の正体には大いに興味をひかれた。
しかし、ソレルは必要なものを手に入れたのか?と問われれば、もちろんイエスなのである。スリル満点の展開。さわやかな読後感。おしゃれな表紙とイラストと共に、極上の読み物といってよい。小学上級向き(4年生ぐらいからでも楽しめる) (千田てるみ)
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