生き方としてのノラ=『猫町』
毎朝の散歩で出会うのは、犬自慢の皆さまである。春先までは、ベストやらズボンもどきをはかせて、あちこちでお互いのイヌ褒めをしあって長いおしゃべりを繰り返している。最近の傾向は、イヌ派よりネコ派の方が多数となったということだが、ネコのお散歩には出会わない。ネコに紐付けは似合わない、というか嫌いなのだ。
ネコは独立心が強いと思う。この写真集は、作者の故郷・徳島県の海辺の町の猫たちを撮ったものだ。その個性というか、風格というか・・・。エサをもらったからと言って、思う通りになると思うなよ、というノラとしての独立心、品格を感じる。ネコの写真集は多いが、どうも媚態のネコは好かない。この『猫町』のネコたちは群れを作っていることは確かだが、それぞれに強い個性と主張をもっている。「やたらと近づくじゃないよ…」という、エサなんか求めない、「おれはちゃんと食ってるぜ、お前の世話になんかならないよ」という顔だし、身体全体にノラとしての緊張がある。つまりは、ノラというのは、一つの生き方なんだと伝わってくる。見飽きない。 土井九郎さんは、ネコの写真かというのではない。20代から船に乗り、エンジニアの仕事をしながら写真を撮り始め、日本や外国の様々な港に立ちよると、カメラを持って街歩きをしてきたという。
写真・土井九郎『猫町』かもがわ出版2020.8.2,000円(岩辺)
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