中川なをみ2作=『かけはし 浅川巧』&『ユキとヨンホ』
『かけはし』は、すでに千田さんが紹介してくれていますので、私は関連の本を紹介す
ることにします。
中川なをみさんは、これに先立って、『ユキとヨンホ 白磁にみせられて』(新日本出
版社2014.7)を書いている。勢いで、図書館で借りた。響きあった作品だ。時は豊臣秀吉
の朝鮮侵略から江戸時代初期のかかる数十年間。舞台は博多から平戸、伊万里から有田を
ふくむ北九州。
主人公ユキは博多を拠点とする中国・明の商人と日本人女性夫婦の娘。時代が激しく動
いた時だ。中国では明政権を倒そうとする運動が広がり、父はそれを支援すべく帰郷する
。残された母子は母の故郷平戸に移るが、使用人であった平太の勧めで伊万里に移る。そ
こでユキは廻船問屋など、活気あふれる港の様子を見聞きしてその刺激を受けて成長して
いく。そして、廻船問屋の使用人となり、さらにその才を認められて新しい店を受け持つようになる。その活動のなかで、有田などに多くの朝鮮人が秀吉の侵略時に連行(拉致)されてきたこと、その中に多くの陶工がいることを知る。彼らの陶磁器開発への思いと意欲に触れて力のもなろうとする。その案内役(通訳)が青年ヨンホである。ヨンホは父と
共に竹細工を生計の足しとしている。それもまたユキの商いの対象ともなる。こうして中国人と日本人の子であるユキと、朝鮮人であり日本で暮らすヨンホとが結ばれていく。しかし、二人は一緒に暮らすのではなく、それぞれのやりたい商業活動の道に打ち込んでいく新しいタイプの夫婦として生きていく。国際性と夫婦のあり方など、様々な問題を話し合うことができそう。(岩辺泰吏)
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