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今こそ読もう、この1冊!!44

『サステナブル・ビーチ』(小手鞠るい・作 カシワイ・絵 さ・え・ら書房 2021年4月12日

          定価:(本体1400円+税)

 主人公は、七海(ななみ)、アメリカ人の母と日本人の父を持つ小学6年生の男の子。

夏休みに、母と一緒にハワイに旅行に行くことになる。

 ハワイの海岸で、いろんな模様の空き瓶、いろんな色のプラスチックの容器、破れたビーチボールなど大量のゴミの山でできた2メートルほどの大きなクラゲのような化け物のオブジェを見つけ、そのクラゲの化け物を作ったオーガストさんというアメリカ人と出会う。オーガストさんはベトナム戦争で左腕を失い、アメリカに帰ってきて、戦争のことが忘れられず、仕事ができずお酒の溺れることになった。妻と別れてあちこちの土地を放浪した後にハワイにやってきた。そこで、無数のごみを見つけたという。社会から捨てられた存在、まだ使えるのに捨てられたゴミに愛着を感じて、それらのゴミを組み合わせて物体を作る面白さを知ったという。また、砂浜に色とりどりのきれいな小さなつぶつぶが混じっているのは、人間が捨てたプラステックが海をさまよいながら細かいつぶつぶになったものだという。

 オーガストさんから、ショッピングモールの中のギャラリー「フリースピリット」に行くことをすすめられる。行ってみると、海に捨てられたごみで作られた芸術作品が飾られていた。ごみだらけの島に群がっているシロクマの写真を見ていると、ピカケ(ハワイ語でクジャク)という女の子に声をかけられる。ピカケさんベトナム系の少女で、ベトナム戦争でアメリカ軍が大量に使用した枯れ葉剤によって、生まれつき片方の足がもう片方より短くて歩くのに少し苦労している。ピカケさんは、ギャラリーの奥にある「サステナブル・ビーチ」とプレートが掲げられた小さな部屋に案内される。そこには、壁一面に海の

中にプランクトン、小さな魚、中くらいの魚、大きな魚が描かれている。その絵を見ながら、食物連鎖について教えてもらう。人間が捨てたプラステックを魚やウミガメ、海鳥を食べて、やがて細かいマイクロプラステックとなり、魚を食べる人間もプラステックを食べることになっていること、を知る。そこに描かれたクジラの絵のまえで、ピカケさんは、このクジラは大量のプラステックの袋を飲み込んで死んでしまったのだという。話を聞いた七海は、衝撃を受け、「ぼくができることをする」ことをピカケさんと約束する。 七海は、日本に帰ってからも、ピカケさんと文通をしながら、今、自分ができることを考える。図書館で本を読み、「海洋プラステック憲章」があるのだが、日本とアメリカだけは署名していなこと、森の腐葉土が海の栄養を作ること、森の栄養分が川を通って海に流れ、プランクトンを育てる事、などを知る。七海は、実際に山や川に行って、そこに捨てられているゴミの山に気づき、森や川をきれいにすることの大切さを知り、川原のクリーン作戦を始める。(渡部康夫)