『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった。』
岸田奈美著 小学館 2020年9月
「一生に一度しか起こらないような出来事が、なぜだか何度も起きてしまう」という若い作家のトラブルいっぱいの日常を描いたエッセイです。「1000文字で済むことを2000文字で伝える作風」のおかげで大笑いとともに読み終えました。
彼女の家族は、父は作者が中学生の頃に急逝、母は病気がもとで車いすユーザー、弟は
ダウン症で知的障害を持つというなかなかにハードな状況。しかし彼女は「これは、もうアカン。」と言いながらいつもゲラゲラ笑っているのです。「ものごとをおもしろく捉える思考力」は亡くなったお父さん譲りとのこと。お父さんが愛する家族、そして自分のことを「最高だ」とほめてもらいたくてこの本を書いたのだそうです。
自分や家族の気持ちをそのまま受け入れ、理不尽なできごとも笑い飛ばす余裕を持った生き方に感銘を受け、爽快感を覚えます。
続刊の『もうあかんわ日記』(ライツ社 021.5)では祖父の葬儀、祖母の認知症、母の大手術などさらにパワーアップしたトラブルの様子が描かれます。「人生は一人で抱え込めば悲劇だが、人に語って笑わせれば喜劇だ。」チャップリンの言葉に倣った「ナミップリン」の言葉です。(笹島)
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