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今こそ読もう、この1冊!!58

ロボットが支配する世界で SF『12歳のロボット』

「人間はいないほうが、世界はずっとすばらしい」…この問いに答えられますか。

 人間の傲慢な自然破壊と止むことのない争い…に反乱を起こしたロボットたちによって支配された地球。人間は消し去られてしまった。そして、その30年後の世界。語り手の「ぼく」は、12歳のロボット。そしてその働く現場に12歳の人間の少女が現れるという設定のおもしろさ。ソーラーパネルのすえつけを仕事としているXR935は178.9㎝、電気系統の取り付けをしているSkD988は箱型で76.2㎝、運搬と取り付けをしているシーロン902は342.4㎝。この3体のロボットがセットで仕事をしている。人間の少女エマは149.8㎝。地下に避難した人間集団が流行性の病気に冒されたために、別の地下集団の薬をもらいに行く役割を担って地上に出てきた。3体のロボットがエマを助けてこれを実現させようと戦う物語。つまり、一つのテーマは、友情だ。ロボットと人間は「友だち」になれるのか。 これだけでもおもしろい。なぜ、人間は地上から消されたのか、人間とロボットの和解はできるのか、人類は滅亡から救われるのか……。気候変動やテロ・紛争、コロナ・パンデミックなど現代的な課題と密接につながっている。もう作者は「あとがき」でこう呼びかけている。

 「本は複雑な世界でどう生きていけばいいかを教えてくれる。他者に共感させてくれる。他者の目を通してものを見るのを助けてくれる。たとえ、その他者がロボットだとしても…。」パソコンなどの苦手な私には、なかなかついていけないロボットの思考回路の複雑さと用語。しかし、逆に今どきの子どもならきっとわかるに違いない。この冒険にわくわくと参加していくだろう。中学年、高学年から。 

リー・ベーコン『12歳のロボット ぼくとエマの希望の旅』大谷真由美訳(早川書房2021.5)

そうそう、前にもこの「ハヤカワ・ジュニア・ブックス」の本を紹介したときに、紹介しましたが、編集者の10代読者への呼びかけがすてきです。「どのジャンルにも、自分の『好き』を大きく育て、追いかけて、すばらしい物語を生み出してきた人たちがいます。そんな『好き』に満ちた、奥深い世界を案内します

。読んでも読んでも尽きることなく、おもしろい本が見つかる世界です。 私たちの一冊が、つぎの一冊につながり、みなさんがそれぞれの『好き』を育てていくお手伝いができたら、と願っています。」(岩辺泰吏)