科学者という闘い 『わたしの科学』
いまでは、毎年のノーベル賞受賞発表が世界の注目となっている。オリンピックのように、「我が国の獲得!」とのような表現で躍り上がったりする。しかし、一つの発見、発明の裏に、大変な困難、ある時は差別、そして、苦悩があった
ことはなかなか語られない。
この本は、13人のノーベル物理学、化学、生理学、医学賞受賞者の「発見と生きかた」を、10代向けにわかりやすく、一人見開きページで紹介している。鮮明なデザインが輝きをもっていて、魅力的だ。その意味を話し合うことでも、その世界に引き込むことができる。
タイトルには、その業績とその持つ意味を短い言葉であらわしているので、これもまた一つアニマシオンができる。 例えば、最近を分解する酵素「ニゾチーム」や、抗生物質「ペニシリン」を発見したアレクサンダー・フレミンゴには、「科学とは、失敗から学ぶこと」というタイトルが付けられている。「どんな失敗だろう?」という興味がわく。エイズ感染の恐怖が世界を覆っているとき、フランソワーズ・バレ=シヌシは患者に寄り添って励ましつつ、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)によってエイズが発症することをつきとめた。そのタイトルは、「科学とは、わたしたちの恐怖をしずめること」であり、デ
ザインはウイルスなどのうごめく世界を潜水して調べる女性である。
巻末に翻訳者からのメッセージと「ことばの説明と参考資料」がついている。アリ・ウインター・文、ミカエル・エル・ファティ・絵、中井はるの・訳『わたしの科学』かもがわ出版2022.1.25 2000円+
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