『10代と考える「スマホ」』
竹内和雄著 岩波書店 2022年2月10日
岩波書店が2021年3月に創刊した岩波ジュニアスタートブックの中の1冊。このジュニアスタートブックは「中学生が自分の可能性を広げいくためのシリ
ーズです」と本の扉にあるように中学生向けの本だ。多くの名著がある岩波ジュニア新書は中学生にはちょっと難しいというものが少なくない。その点、このジュニアスタートブックは中学生を対象としているため、難しいことも優しい言葉でとてもわかりやすく説明してある。また扱うテーマも現在的課題に答えるものとなっている。例えば同シリーズの『地球温暖化を解決したい』や『支える、支えられる、支え合う』等は社会科の授業ですぐに使いたいと思える本だ。
本書の著者竹内和雄氏は元中学校の教師で、20年間生徒指導に奔走し現在は大学で教鞭をとっている。それだけに中学生のことがよくわかっていて、本書では中学生にとって一番大きな問題とも言えるスマホとネットゲームの問題点やそのつきあい方法について説いている。限られた紙面の中で重要、深刻な内容をよくこれだけわかりやすく書けたものだと感心する。
私が本書から学んだこと、教えている中学生を見てその通りだと感じた点がいくつかある。
まず、使われている統計、アンケート調査資料がとてもいい。例えば、「ネット利用と学力の関係」「ネット接続時間と満足度や関心度」には納得だ。ネット利用が多くなればなるほどテストの点数は下がり、友人や家庭に満足できなくなり、自分にも満足できなくなる。また社会への関心も少なくなる。教え
ている中学生を見ていて頷ける。「帰宅後に一番すること」のアンケートでは小4から中3までの中で中2が一番多く、勉強・読書等は少ない。これも目の前の子どもたちを見ていると納得だ。「ネットトラブル」の問題や「ネット依存」についてもわかりやすく書いてある。今、子どもたちの中で問題になって
いる「SNSトラブル」については、具体的な例や練習問題があって子ども自身に考えさせるようになっている。そして最後は、スマホやネットを賢く使いこなすにはどうしたら良いかその方法を提案している。 1、2時間で読める本の中にこれだけの内容が詰まっている。今を生きる中学生はもちろん、保護者、教師にぜひ読んで欲しい一冊だ。(笠井英彦)
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