『いつか、太陽の船』
村中季衣・作、こしだミカ・絵
新日本出版社19.3
村中さんは、(2019年の)「3年前、根室のサンマがベトナムの市場で人々を魅了しているという小さな新聞記事を見つけ…、根室に行った」のだそうだ。そこで、出会った人たちからの取材に基づき作品化したという。
主人公は海翔(かいと)6年生。東日本大震災で津波に襲われた気仙沼の出身だ。両親と弟(今は1年生)と共に、根室にやってきた。漁船の造船工場を営んでいたお父さんが、ここで船づくりをしていたオーナーの厚意で工場と倉庫を提供してもらい、仕事を進めているのだ。そこに住んでもいる。父の技術を信頼し、注文もあり、根室の若者たちも働くようになった。気仙沼と根室を結ぶ「みらい造船事業」が実際に進んでいることを背景にしている物語だ。海翔が父の後を歩いていこうと心に決めることが「いつか、太陽の船」のタイトルだ。イラストには花咲港小学校・北斗小学校の子どもたちが参加してサンマを描いている。「未来」を語ることは難しい時代だけれど、確かな信頼に結ばれて気づかれていくものはあるのだと教えてくれる。(岩辺泰吏)
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