『本おじさんのまちかど図書館』 ウマ・クラシュナズワミー 作
長友恵子 訳 川原瑞丸 絵
本が好きなヤズミンは、毎日まちかど図書館で本を借りては、1日1冊読み終えることを目標にして、読書を楽しんでいました。まちかど図書館のおじさんは、読み手にぴったりの本を紹介してくれるのです。そんなまちかど図書館が、市から不法占有とみなされ、撤去を迫られます。ヤスミンにとって本のない日常などは考えられません。ヤスミンは正しいと思ったらすぐに行動します。そして多くの人を巻き込み市長選挙の候補者を動かしていきます。その過程で、隣人たちと知り合いになったり、その人々の良さが分かったり、大人の身勝手さを知ったり・・・。
インドが舞台の物語なので、日本と違う封建的な人間関係もチラチラ見えますが、強い意志を持ち行動すれば何かが変わっていくことは、どの国でも同じなのでしょう。そんなヤスミンの、父のお兄さんの家長としてのふるまいや、友だちとの関係なども丁寧に描かれています。お父さんが失職した友だちの悩みなどには、ため息が出ました。日本より隣人との関係が濃いように思いましたが、その中で何かを変えるのは、やはり大変なことなのでしょうね。インドで市長候補を動かし、まちかど図書館を守ったヤスミンの姿は、イギリスのスープ運動を始めた少年や、環境問題でのグレタ・トゥーンベリを思い起こさせます。読後が爽快な本でした。
(小学校中学年ぐらいから)(千田てるみ)
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