今こそ読もう、この一冊！！９４

『青く塗りつぶせ』

　　阿部夏丸 作　酒井 以 絵　　ポプラ社　2021年７月発行

　人口500人の小さな島。小学校は全校生徒３５人。６年生は、男子3人、女子3人の合計６人。

男子生徒の１人、カイトは両親を船の事故で亡くして以来、祖父の漁の手伝いをしていて不登校を続けている。カイトの家には、両親が残した借金がある。同級生はカイトのために、海で集めた物や生き物のネット通販を計画した。たとえば、ビーチグラス、これはガラスのかけらが長い年月の間に砂や波によって角が削れて丸くなったもので、特に赤いビーチグラスは貴重品。あとはきれいな貝殻などアクセサリーやインテリアに使えるもの。マニアが欲しがりそうなヒトデやウニの骨、魚の骨のオブジェも商品に加える。生きたナマコやイカ、タツノオトシゴなどは生け簀に放っておいて、注文に応じてセットして送る。海が身近にない地方から体験イベントのための問い合わせや注文がくる。

　同級生の兄の応援もあって、売り上げは順調に伸びていった。ところが、このことがテレビでとりあげられたことから、子どもたちの行動を誹謗中傷するネットの書き込みや、役所への苦情メールが届く。県の水産課からの要請を受けて開いた漁協の大人たちが話し合い、出した結論がすばらしい。（小学校高学年向け）（廣畑　環）