若手読書会で読んだ1冊を紹介
『スズメぼうし』 たつみや章著
1997年1月 あかね書房
この絵本は次のような話だ。
公園で主人公のひろしは茶色くてふわふわでつばが黄色の帽子を見つけた。ひろしがなんとなくかぶってみると、いきなりスズメになっていた。たいして力を入れなくても簡単に飛べる。その不思議な感覚を楽しんでいたひろし。近くにいたスズメの女の子と話して、スズメのチュンコと名付ける。チュンコと一緒に餌を探したり、泥水を飲んだりすることに初めは抵抗があったが、背に腹は代えられない。むかし僕が飼っていたインコのチュッピーとの再会やカラスのパクンとキレイを探すなど、鳥としての体験をしながら、どうやったら人間に戻れるかを考えて一晩を明かす。そして、仲間のカラスパクンを助けるために「帽子を取ってくれ!」と頼んだ後、人間に戻ることができた。一晩家に帰らなかったことで母親には怒られたが、スズメぼうしの話をすると、父親はスズメぼうしのことを知っていた。
著者のたつみや章さんは1954年生まれの女性作家。女性作家が男の子を主人公にして男の子の視点で描いているという面白い作品。主人公のひろしがぼうしをかぶりすぐスズメになるという入りから面白い。テーマは動物愛ではないだろうか。世界の出来事を人の目線ではなくカラスの目線で描い
ている。またカラスというと人間にとってはゴミを蹴散らかす悪者となっているが、この作品の中でのカラスはそんな見方を変えてくれる。灰色の羽をもつカラスの長老も出てきて面白い。小学生中学年に読み聞かせにいい作品だ。(記録:笠井)
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