『先生が足りない』
氏岡真弓著 岩波書店
2023年4月12日 1800円
著者は朝日新聞の編集委員で教育分野を担当している優れた記者だ。本書は著者が2011年に記事にした教員不足の問題を10年以上追い続けまとめた書だ。2章を読むと、今、全国各地で起こっている先生不在の学校現場の状況がよくわかる。東北の中学生は小学5年生時代に先生が来なかった事態を「うちらは捨てられた」と語る。西日本の中学校では英語教員が1か月不在で英語の授業がない状態が続いた。首都圏の小学校では校長がPTAの会議で保護者に「教員免許をもっている方はいませんか?」「かわりになってくださる方はいませんか」と呼びかけた。教育委員会が教員を探してもいないので自ら探している大阪市の校長は「探しても、探しても、探してもいないんです。」と嘆く。休んだ教員の代わりの教員が来ないと、いまいる教員の負担が増し、連鎖休職が起こる。等々。どの事例も悲痛なものがある。これは今全国各地いたるところで起こっていることなのだ。そして著者は言う。「学校、特に義務教育の場では、あってはならないことが広がっている。それは、教育を受ける権利が保障されていない事態が広がっているということだ。公教育の崩壊と言っても言い過ぎではない」と。 本書を多くの国民に読んでほしい。そして、このあってはならない公教育の惨状をどうすればいいか考えてほしい。(笠井)
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矢部 (水曜日, 17 5月 2023 14:26)
私の住んでいる市でも、授業担当の数が揃わず、格技場に2クラスを集めて合同授業をしているとか、小学校1年に正規の教員が配置できず、3人の担任全てが非正規の職員だとかいう話を聞きました。この本を読んだある校長は、「うちの市の方が状況はひどいかもしれない。」と。全国的に教員不足が現在進行形で起きている。しかも、加速度的に悪化の一途。他人事ではありません。公教育が成り立たなくなっているということは、将来の日本の危機。全国民が真剣に考えなければならない課題なのです。まずは皆さんにこの本を読んでいただき、現場の状態と危機感を共有してもらいたい、そんなことを強く思いました。