『ナマケモノは、なぜ怠けるのか?』
稲垣栄洋著 ちくまプリマー新書 2023年5月10日
おもしろいタイトルだったため購入してしまった。期待を裏切らないおもしろさだった。著者は雑草生態学を専門とする農学博士。この著者が、人間が「つまらない」と決めつけている多くの生き物をとても面白く紹介している。紹介する生き物は植物、昆虫、哺乳類など幅広く40近い。カタツムリ、ナメクジ、ヘビ、アホウドリ、ブタ、ミミズ、イモムシ、ダンゴムシ、ナマケモノ、カモノハシ、ペンギン、カバ、タヌキ、ケラ、アリ、クズ、コウモリ、ハゲワシ、ブチハイエナ、糞虫、イエバエなど
。ゴキブリもいる。
ゴキブリは古生代石炭紀に誕生して以来3億年以上も今とほとんど同じ姿で生きてきた。その能力は凄まじく、走る速度は時速300キロ。瞬発力にも優れわずか0.5秒で危険を察知するという。我々がゴキブリを捕まえるのに苦労するわけだ。この多くの生き物から言えることは、いらない個性はないということ。それぞれの
生き物はそれぞれ生きる環境に適するように進化してきた。だからそのままでいいのだと。最後の人について著者はこのように締めくくっている。「本当は、私たちは弱い生き物である。弱いからこそヒトは助けあった。そして弱いから、ヒトは強く生きることができた。弱くて助け合うからこそ、私たちヒトは、す
ばらしい存在なのだ」と。「だからね。強がらなくてもいいんだよ。」「あなたは、あなたのままでいいんだよ」と。自己肯定感が低い日本の若者を励ます一冊だと言える。(笠井)
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