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今こそ読もう、この一冊!!146

1 今日も、今、 そこに……

『せんそうがやってきた日』

ニコラ・デイビス作、レベッカ・コッブ絵、

長友恵子訳、すずき出版2020.6 

 イスラエルの南端に閉じ込められたアラブの人びと220万人がひしめきあって暮らすガザ地区。そこのイスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃し、戦闘が始まった。長引けば圧倒的な戦力を持つイスラエルの勝利に終わるだろう。ガザ地区はもう廃墟となるのかも知れない。ロシアの侵攻によって始まったウクライナ防衛戦争は長引いている。アフガニスタンでは大きな地震が続き、被害が広がっている。アフリカでもクーデターや内乱が続いている。争いを逃れ、難民となって彷徨う人々は絶えない。子どもも犠牲者だ。子どもだけで逃げ惑っている姿も報道されている。

 この絵本は、ある日、突然にやってきた戦争によって、家族を失い、難民となった子どもが、安心の場を求めてさまよう姿を描いている。「避難所にもうあなたの居場所はない」、つまり「椅子がない」と象徴的に表現されている。その子に、椅子を提供しようという、作者の詩はネットを通じて広まり、この絵本が生れた。2020年の出版だけど、まさにいま、読まれてほしい本だ。

「この絵本を読んで、人を思いやる気持ちと、将来に対して希望を持つということが、どれほど大切なことか、心にとめていただけますように」と、作者は呼びかけている。(岩辺泰吏)