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12月例会「本郷弦さんによる こやまみねこさんの詩の朗読」

12月特別例会報告

 12月2日、特別例会を開きました。今回は詩人・作家のこやま峰子さんと俳優の本郷弦さんを招いての「朗読劇」と「演劇のワークショップ」でした。26年の読書のアニマシオン研究会の歴史の中でも「演劇」をテーマとしたのは初めてです。楽しく、学ぶことの多い月例会となりました。

■朗読劇とこやまさん、本郷さんのお話

 まず本郷弦さんによる「朗読劇」。読んだのはこやま峰子さん訳の『あいたかったよ』(朔北社)です。バックにこの本にふさわしい音楽が流れる中、本郷さんの透き通る声が会場に響き渡ります。参加者は本の中身に引き込まれます。戦争や平和、戦争の中での子どもの気持ちがよくわかります。私たちがやっている読み聞かせにはない味わいがありました。

次に、こやま峰子さんからこの本についてのお話がありました。作者エルズビエタは私(こやまさん)と同じ年にポーランドで生まれアルザスに育った。その後フランスに移り住んだ。私自身戦争を体験したのでこの本は特別なものがある。元のタイトルは『Flon-FlonMusette』だったが、フロンというのは当時フロンガスが環境問題を招くということでいいイメージがなかったため『あいたかったよ』にした。アルザスはとても自然が美しいいい所でもともとはアルザス語を話していた。だが、戦争のためドイツ領になったりフランス領になったり翻弄された等の話がありました。

 その後、本郷さんからこの本の朗読劇を作った経過、曲にもこだわったこと等の話がありました。この朗読劇には3つの「仕掛け」があるとのこと。その3つの種明かしをしてくれました。

①初めの入りは本を読むのではなく、暗唱して語る。

②途中で読むリズムを変える。本の文の順番をちょっと変える。

③最後にタイトルを見せる。

ただ届けるのではなく、面白く細工したということでした。これは私たちが進めているまさにアニマシオンです。バックの音楽については、初めヨーロッパのクラシックも考えたが、どうも合わない。そこで坂本龍一さんの曲を聞く中で「これだ」と思うものに出会ったと。

「朗読」ではなく「朗読劇」にすることで、聞いている人が「背もたれから背が離れる」ことになるのだと。この本郷さんの話は私たちが授業を作るのに活かせるものだと思いました。

 

 本郷さんからはこんな話もありました。「メラビアンの法則」の話。人と人がコミュニケーションを図るとき、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報は7%。これを実証するため、参加者の一人を前に出して「愛してる」と言った時の表情を変えた実演をしました。実際に見ると納得です。そこから、相手と話すとき、立つ角度や目線、立つ姿勢、重心をどこに置くか等の話がありました。普段の生活ではこれらはなかなか意識しないことです。

■自己紹介と演劇ワークショップ

 自己紹介は参加者が大きな車座になって行いました。本郷さんから5つのことを話してほしいとリクエストが。「名前」「お住まい」「一番楽しかったこと」「笑ったこと」「怒ったこと」です。時計回りで一人ひとり語っていきました。

「楽しかったのは好きなダンサーのフラメンゴを見る時」「笑ったのは友人同士で集まり名前が思い出せなかったこと」「怒ったのはガザの子どもたちが亡くなっていくこと」等。それぞれが思いを込めて語っていきました。時間はかかりましたが、語る姿、内容から学ぶことが多々ありました。

 ワークショップは10人グループで取り組みました。二人組で一人が「あなた」と呼びかけます。この時両手も使います。それに対し「私?」と受け取ります。さらに「はい」答えます。これを相手をかえて繰り返します。相手にしっかり届ける、受け止めることの意味が確認できるワークショップです。そして次はこれを言葉だけで行います。ちょっと難しくなります。さらにその次はこれを目で、アイコンタクトだけで行うのです。しかもこれは10人グループではなく、30人全員で。「ちゃんと届ける。それを感じ、しっかり受け止める」ことの意味が分かります。これは集中していることももちろんですが、視野を広げ参加者全てを見ることも要求されます。本郷さんはこれを「集中は拡散だ」と表現しました。

 

 難しく、面白い、多くのことを学んだワークショップでした。(笠井)