『せんそうがおわるまで、あと2分』
ジャック・ゴールドスティン作、長友恵子訳
合同出版 2023.4
1914年に始まった第一次世界大戦は、1918年11月11日11時に戦闘を止め終戦となった。
しかし、前線ではそのぎりぎりまで戦闘は続けられた。ジョージ・ローレンス・プライスはその2分前10時58分に戦死した「最後のカナダ兵」である。この事実に基づき、物語は創作された。
ジュールとジムは同じ日に生まれた。ジムが2分先に生まれたのだ。二人はとても仲良しだった。1914年に世界大戦が始まって、イギリスの自治領だったカナダもドイツと戦うことになった。二人は軍隊に入ってフランスの前線に送られた。戦争は悲惨なものだったが、勝手に抜けることはできない。その戦争の実態がこえでもかというほど描かれている。
その最後の時間間際に攻撃命令が出された。ジムは先頭に立って飛び出し、ジュールの目の前で撃たれた。戦争が終わる2分前だった。ジュールは故郷に帰ったが、どんな仕事も続けられなかった。そして、時計屋を始めた。その時計はすべて2分遅れていたということだ。戦争は今も続いている。無残なものだ。あらためて絵本としてそれを伝えている。それでも、ユーモアをふくむ優しいタッチの絵は読み聞かせにも耐えられる。
日本でも太平洋戦争は1945年8月15日の無条件降伏によって終結したのだけれども、そのことが前線にいきわたるには何か月もかかった。その間に多くの兵が死に、民間人が被害にあっている。妻の父親は1945年6月に北京にいて召集された。戦死の通知は8月20日付けである。
戦争そのものが無くならなければならない。「人道的戦争」などというものは歴史上あったことはない。「国際法に基づいた戦争」などということもありえない。わかりきったことなのに、そういう隘路があるかのように言うのは政治のずるさだ。「子ども(だけ)を救う」などということも不可能だ。「戦争をやめろ!」―これだけが真実だ。(岩辺泰吏)
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