映画として読む谷口ジロー
『シートン 第2章 少年とオオヤマネコ』
谷口ジローコレクション
双葉社 2023.4
谷口ジローファンは多い。私は、『「坊ちゃん」の時代』シリーズにはまって以来のフ
ァンだ。残念ながら、引っ越しの時に、手塚治虫作品などとともに処分してしまった。こ
れは、ファンのための上製本として出版されているもので、「谷口ジローコレクション27」となる。今泉吉晴『シートン 子どもに愛されたナチュラリスト』(福音館)に基づき、開拓時代のカナダを舞台にシートンの少年時代を描いている。自然豊かな森を愛した少年シートンは、夏休みを父の農場で働いていた農夫の息子トムの農場で過ごす。トムの妻、二人の姉妹の4人家族の元で暮らす。
家畜の鶏を襲う野生のオオヤマネコ、家族を襲う熱病との闘い……、一人前の働き手と
なって苦しみ、成長していくシートンを、谷口ジローが丁寧に描く。そこに、毎回の月報誌が挟み込まれていて、字幕翻訳者の岩辺いずみ(長女)が「映画として読む谷口ジロー」を題したエッセイを書いている。こういう見方、読み方もあるんだなと感心した。その結びの部分を引用しておきたい。
「言葉と画が一体となって、奥行きのある世界を作る。文字を読んでいるのに、頭の中で音が響いているような錯覚を与え、台詞の裏にある感情を共有する。これこそ、私が目指す字幕のあり方だ。読ませる字幕ではなく、映像と一体となってスッと頭に入る字幕。観る者を作品の世界に浸らせて、見終わった後に字幕があったことすら忘れてしまうような字幕。谷口ジローさんの漫画を読んでいると、そういう字幕が書けそうな気がしてくる。彼の漫画を“映画”として読みながら、私は字幕の可能性に思いを馳せてワクワクしている。」(岩辺泰吏)
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