· 

今こそ読もう、この一冊!!175

『今日もピアノ・ピアーノ』

有本綾 作  今日マチ子絵 学研出版 

小学六年生の海斗は、塾への通り道で、ストリートピアノの音に引き寄せられます。それがストリートピアノで演奏していたおじいさん、青柳さんとの出会いでした。青柳さんの孫、花音に「海斗もピアノ、弾いてみたら?」と声をかけられたことがきっかけとなり、青柳さんとのレッスンが始まります。

空手にスイミング、塾。現代の小学生と違わず、海斗もとても忙しい。それでも海斗は、自分の意志で選んだピアノだけでなく、「どれも中途半端な自分がいやなら、今が変わるチャンスなのかもしれない」と、少しずつ前進することを決意します。「ピアノ・ピアーノ」……「あわてず、ゆっくり、少しずつ」。登場する言葉通り、物語を包んだ優しさに心が温められる作品です。(名鏡)