『アナグマの森へ』
アンソニー・マゴ―ワン作
野口絵美・訳
徳間書店23.12
『荒野にヒバリをさがして』の姉妹編。その数年前を描く。
「おれ」はニッキー。一歳上の兄・ケニーは知的障碍を持つ。兄は、町の悪ガキ3人に呼び出され、林でアナグマを捕らえる作業をさせられる。彼らの連れてきた犬はアナグマに深い傷を負わされ放置されるが、それを連れ帰って介護する。そこに残されたアナグマの子も連れてくる。犬とアナグマは支え合って仲良く過ごす。ニッキーはアナグマの子を家族の元に返そうと巣穴を探し出すが、再び悪ガキにつかまる。そこへ父が警官と共に現れて救い出す。父は、母に逃げだされて仕事もうまくいかず、飲んだくれていたが、二人の息子のために真剣に仕事を探し始め、新しい恋人もでき、仕事の見通しもつく。軽快な語りのなかで、
登場人物の個性が描き出されている。速いテンポの展開が読者を誘い込み、共感を育みながら読ませる。ニッキー家族の再生を、アナグマ親子の再生と重ね合わせて描いている。
(岩辺泰吏)
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