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今こそ読もう、この一冊!!203

父を探し、守り抜く少年の旅

『この銃弾を忘れない』

マイテ・カランサ作、宇野和美訳

徳間書店24.12

 「すべての子どもが、二度と再び戦争を体験せずにすむように」と作者マイテ・カランサは結んでいる。舞台は1938年の夏から秋にかけて、スペイン西北部。1936年㋆、スペインに成立した共和国政府に対して、フランコ将軍が指導する軍部が反乱を越し、当時のファシスト・ドイツ、イタリアの全面的支援の下に全土を戦火に巻きこんで軍部独裁政権を樹立する。これは1975年まで続く。

 主人公の少年ミゲル(語り手「ぼく」)は13歳。炭鉱夫であった父は共和国軍に加わり、「反乱軍」に捕まって遠い収容所に送りこまれている。オオカミなどがいる山地をこえ、はるかなその収容所まで会いに行く。牧畜犬である愛犬グレタが唯一の同志である。父が生きていること自体が半信半疑な情報であったが、ついに探しあてる。収容者と交流を続けるが、彼らは海辺の街に引率されて岸壁で銃殺される。ミゲルは父を救い出し、支援者の庇護によって回復させ、故郷に戻る。そこにも反乱軍の警察が追ってくる……。緊張の下のわずかな希望……。終わりまでを一気に読ませる。

 この物語は、いま、世界中で再び繰り返されていることだ。戦争を語り継ぐことは難しい。ヤングアダルトの作品では様々な努力が重ねられているので、ぜひ、手渡す工夫がなされてほしいし、まず「父を探し出し、守り抜く知恵と勇気の冒険物語」として進めることもできる。まず私たちが読みたい。軽快な語りの訳文がいい。重く、暗くならないストーリーテリングが豊かだ。(岩辺泰吏)